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    <title>貸し本棚</title>
    <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com</link>
    <description>貸し本棚・小説更新情報</description>
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    <copyright>Copyright ©2026 蘆蕭雪.</copyright>
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    <item>
      <title> - 花筏</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/3031/section/39888</link>
      <pubDate>Fri, 03 Apr 2026 18:00:00 +0900</pubDate>
      <description>題名の「花筏」の字面から連想。
花霞の下、花筏とともに流されていく娘の話。
雛流しの季節も近いな……と思いましたが因習は創作に過ぎません。

　⋆作品はフィクションです。
　⋆実在の事物とは全く関係ありません。
　⋆情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
　⋆表紙画像はかんたん表紙メーカーで作成したものです。

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[
　花霞の暈《かさ》に朦朧《もうろう》と勾引《かどわ》かされそうになる。片岸《かたぎし》に桜竝木《さくらなみき》、霞の色合いは綿飴に似て、淡い紅色の花枝《かし》も纏綿《てんめん》と綴《つづ》れる。下には川が流れている。橋の紅欄《こうらん》を覗き込めば、散る葩《はな》は眼下の水面《みなも》に泛《うか》んだ。記憶は朧月よりもおぼつかぬままだった。桜には香りがない。ただ花ばかりが淡い。潺《せん》潺《せん》とした流れは、橋の真下《ました》で遅滞して濁酒《どぶろく》のように落花《らっか》を浸した。葩も白く色冷《いろざ》める。花筏の綱《つな》を橋脚に結わえて舫《もや》うさまである。それにしても何処《どこ》から来たのだろう。川を遡れば水源も分《わか》ろうに、この身は当途《あてど》もなく漂泊するように思われる。花筏も溜《とど》まるままでいるから頭上を仰いだ。下枝《しずえ》の合間、紅霞の破《や》れ目《め》か...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>鷽憑【うそつき】 - 【新編】怪鳥三題</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/3013/section/39702</link>
      <pubDate>Sun, 22 Mar 2026 12:10:00 +0900</pubDate>
      <description>題名通り、「怪鳥」にまつわる三題の掌篇集。
昨年の旧作「怪鳥三題」から新たに掌篇を編み直しました。
正統派の怪談小説を目指しています。美少年、美青年の現れる怪談が好きです。
　
　　【目次】
　　　・「鵜嚥【うのみ】」　……鵜／駄洒落／魔を覗く
　　　・「烏鷺【うろ】」　　……烏鷺／真偽不明／弾指
　　　・「鷽憑【うそつき】」……鷽／駄洒落／罰当たり

　【参考文献】
　『しぐさの民俗学』　常光徹著、ミネルヴァ書房　2006年
　『ホトトギス季寄せ』　稲畑汀子編、三省堂、1987年

　⋆作品はフィクションです。実在の習俗などとは関係ありません。
　⋆上記の文献を参考にしていますが脚色や潤色を含みます。（弾指について）
　⋆情報の正確性や信憑性を保証しません。
　（表紙はかんたん表紙メーカーで作成・加工したものです）
　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　宴も酣の頃、男と川床《ゆか》じみた桟敷《さじき》で膳を囲むことになった。川床《かわどこ》と読めば貴船だが、川床《ゆか》と読むなら鴨川の夏の風物詩であろう。尤《もっと》も、その桟敷の造りにしても、花火の観覧に設《しつら》えた桟敷席のような普請《ふしん》だった。薄手の茣蓙《ござ》を敷いた枡形《ますがた》の区割《くわり》に人数分の膳《ぜん》を揃える。川沿《かわぞ》いとあって温《ぬる》いが風も渡る。頭上の横木で硝子《ビイドロ》の風鈴が一列に鳴る。田舎《いなか》でも納涼の風情《ふぜい》を啜りたいのが人情である。既に酔った酒客《しゅかく》で満員だった。繁盛具合に気圧《けお》されて店員に相席を打診されたのを肯《うべな》った。連れられてきた男は口達者な瓜実顔《うりざねがお》の好男子だった。ご縁に感謝して、などと言われては皮肉も疑い難《がた》い。その口吻も、上方《かみがた》の剽軽な女慣れした嫖客の風情であ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>烏鷺【うろ】 - 【新編】怪鳥三題</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/3013/section/39701</link>
      <pubDate>Sun, 22 Mar 2026 12:05:00 +0900</pubDate>
      <description>題名通り、「怪鳥」にまつわる三題の掌篇集。
昨年の旧作「怪鳥三題」から新たに掌篇を編み直しました。
正統派の怪談小説を目指しています。美少年、美青年の現れる怪談が好きです。
　
　　【目次】
　　　・「鵜嚥【うのみ】」　……鵜／駄洒落／魔を覗く
　　　・「烏鷺【うろ】」　　……烏鷺／真偽不明／弾指
　　　・「鷽憑【うそつき】」……鷽／駄洒落／罰当たり

　【参考文献】
　『しぐさの民俗学』　常光徹著、ミネルヴァ書房　2006年
　『ホトトギス季寄せ』　稲畑汀子編、三省堂、1987年

　⋆作品はフィクションです。実在の習俗などとは関係ありません。
　⋆上記の文献を参考にしていますが脚色や潤色を含みます。（弾指について）
　⋆情報の正確性や信憑性を保証しません。
　（表紙はかんたん表紙メーカーで作成・加工したものです）
　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[
　五月雨《さみだれ》が止《や》んだから夜の漫歩《まんぽ》に出た。近所の坂の中腹にある檀那寺《だんなでら》の脇を通り掛かった。鬱葱たる竹藪《たけやぶ》が、弓張月《ゆみはりづき》を浮かべた夜空を鋸歯《きょし》で齧る。薄紙《うすがみ》を漉いたがごとく幽《かす》かに明るい。檀那寺の隣に孟宗竹と熊笹の混じった竹藪が屯《たむろ》する。竹藪は黒く、陰気な曇天の夜空に濃墨《こずみ》で木立を描いた。藪の周囲を竹垣が巡る。竹垣に蕚《がく》の白い山紫陽花《やまあじさい》が花籠《はなこ》を盛る。蕚から蕊《しべ》からまた葉から霖雨《りんう》の露が落ちた。青時雨《あおしぐれ》は山紫陽花を濡らしながら降《ふ》る。路傍《ろぼう》へ漏《も》れる花籠を追うように境内《けいだい》の境目を辿る。茅葺《かやぶき》の寺門《じもん》まで行くと坊主頭の少年が作務衣《さむえ》姿で立っていた。青い剃り跡も瑞々《みずみず》しい寺の次男坊であ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>鵜嚥【うのみ】 - 【新編】怪鳥三題</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/3013/section/39700</link>
      <pubDate>Sun, 22 Mar 2026 12:00:00 +0900</pubDate>
      <description>題名通り、「怪鳥」にまつわる三題の掌篇集。
昨年の旧作「怪鳥三題」から新たに掌篇を編み直しました。
正統派の怪談小説を目指しています。美少年、美青年の現れる怪談が好きです。
　
　　【目次】
　　　・「鵜嚥【うのみ】」　……鵜／駄洒落／魔を覗く
　　　・「烏鷺【うろ】」　　……烏鷺／真偽不明／弾指
　　　・「鷽憑【うそつき】」……鷽／駄洒落／罰当たり

　【参考文献】
　『しぐさの民俗学』　常光徹著、ミネルヴァ書房　2006年
　『ホトトギス季寄せ』　稲畑汀子編、三省堂、1987年

　⋆作品はフィクションです。実在の習俗などとは関係ありません。
　⋆上記の文献を参考にしていますが脚色や潤色を含みます。（弾指について）
　⋆情報の正確性や信憑性を保証しません。
　（表紙はかんたん表紙メーカーで作成・加工したものです）
　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　小高《こだか》い堤《つつみ》が城下を流れる川沿いを続く。堤を歩けば酔いも醒《さ》めるだろうと思った。橋上をきんと冴えた清酒のような寒風が通る。酒精のせいか足元も覚束《おぼつか》ない。宴会の後、二次会を辞して同僚と逸《はぐ》れて川沿いへ出た。忙《せわ》しい師走は忘年会が駆け続いて肝の休まる暇もない。駅前の居酒屋を離れると夜気に吹き曝《さら》された。軒に紅燈《こうとう》の連なる表通りを裏路地へ抜けた。緩やかな坂を登《のぼ》って堤と道路の間《あいだ》に入り組んだ裏道から堤防に出た。橋が二、三本架かっているうちの一本が月影の中に明瞭《くっきり》と見えた。桁橋《けたばし》の上を白く照り返している。誘われるままに歩いて行った。欄干に手を措《お》き、蛤碁石の月夜に耀く眼下の川面を眺める。橋に並んだ街燈が、八角の雪洞《ぼんぼり》の如く光を放つ酩酊に泥濘《ぬかる》んだ闇。二本目の橋の下、中州に鵜のような影...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title> - 嫦蛾</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2982/section/39355</link>
      <pubDate>Wed, 11 Mar 2026 12:30:00 +0900</pubDate>
      <description>　じょうが【嫦蛾】
　　‐　著者の造語　月が美しい夜に現れる燈蛾。名前は嫦娥に由来。
　
　　満月の夜に燈蛾と出会う話。嫦娥ではなく蛾の場合は怪異。
　　　
　⋆作品はフィクションです。
　⋆実在の事物とは全く関係ありません。
　⋆情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
　　題名は筆者が考えた造語であり実在のあらゆる存在と無関係です。

　⋆表紙画像はかんたん表紙メーカーで作成後、加工したものです。

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　暗夜に金色《こんじき》の鋪道《ほどう》が帰路を延《の》べる。鳥目《とりめ》に金の筋が入《い》る。真《まっ》直《す》ぐに線を引いた。満月の晩であるから道も目眩《まばゆ》い。玉鉾は鋪路《しょうろ》の目地を金継ぎして続く。街燈の燭光のせいではあるまいと夜道を踏んだ。電柱の下で羽音が立った。瞬《またた》く翅に燐光《りんこう》が舞う。電燈の光暈《こううん》に燈蛾《ひが》の撒く鱗粉が金《きん》梨《なし》地《じ》と泛《うか》ぶ。常の晩なら燈蛾など美しいとも思わぬ。月下の魔力に魅入られたのであろう。満月は黄金の盃の化身である。黄金の月は家路を追いかけてきた。道は明るかった。それが足を急かせるから闇雲に歩いて帰り着いた。二階家に帰り、窓帷《カーテン》を引いたままの部屋に戻ってもまだ明るい。習慣で電燈の紐を引くと燈蛾の電球に触れ回る音がする。翅が火屋《ほや》でぢりぢり焦げる音が脳を炙る。幻聴を疑いながら窓帷...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title> - 嚢梅</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2973/section/39257</link>
      <pubDate>Mon, 09 Mar 2026 12:11:00 +0900</pubDate>
      <description>　のうばい【嚢梅】
　‐　筆者の造語　人間を祟るとされる紅梅

　⋆作品はフィクションです。
　⋆実在の事物とは全く関係ありません。
　⋆情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
　　題名は筆者が考えた造語であり実在のあらゆる存在と無関係です。

　⋆表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成後、加工したものです。

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　梅園《ばいえん》で山茶花《さざんか》や百日紅《さるすべり》よりもなお赤い紅梅を見た。四辺《あたり》には、名札を下げた淡い紅梅や白梅が東風《こち》に吹かれている。深紅の梅枝《うめがえ》が紅白の乱れた点綴《てんてつ》の中《なか》に天を衝く。朱蠟燭を燈《とも》したようである。四阿《あずまや》を離れて紅梅へ近寄った。根元の芝は生血《いきち》を啜ったまでに赤い。零《こぼ》れた花弁が風に吹き溜まったらしい。幹まで裂けば濃紅の血潮も流れていよう。枝を手折るには惜しまれて地面から紅色の数枚を摘まみ上げた。押し花にでもするが好《よ》かろう。数日を経た頃、本に挟んだ梅花を思い出した拍子に《《異変》》が生じた。先《ま》ず腕に現れた。日を追って脚にも広がった。梅の蕾のような瘤《こぶ》が血管の枝に沿って膨れていく。蕾は硬く口を噤んでいる。薄《うっす》ら氷肌を透ける血の流れを辿《たど》って点々と盛り上がる。医者に見...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title> - 銀箭</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2670/section/37163</link>
      <pubDate>Sat, 15 Nov 2025 14:21:00 +0900</pubDate>
      <description>　汨羅之鬼。水落鬼。
　溺死した人間にまつわる幽霊譚。

　〔改稿〕
　　2025.11.15 ‐ 末尾3行の修正
　　
　⋆作品はフィクションです。
　⋆実在の事物とは全く関係ありません。
　⋆情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
　⋆表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです。

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[
　雨幕《うまく》と霞硝子《かすみがらす》を隔てて人影が立っている。濁世《じょくせ》は雨に湿る、結露の靄を帯びた硝子戸《がらすど》も灰色に濁る。驟雨ばかりが白い。雨水に俗塵を固めて澱《おり》は男の姿を取った。男が拳で戸を敲《たた》く、甍は銀箭に射掛けられて点滴《てんてき》の音《ね》を弾く。拳が硝子板を殴る音も鼓膜を敲く。框に降り、薄暗い和土《たたき》に出て霞硝子の戸を引いた。横滑りした戸口には見知った男が立っていた。雨垂落《あまだれおち》には滝のような雨幕の端《は》が滴垂《した》る。縹渺と樋《とい》を流れる水が瀬音を立てる。男は開口、「酷い雨だが、約束の物を返して貰いに来た」と言った。借金の形《カタ》の話だろうと解った。借金の為に銀細工の懐中時計を預かっていた。骨董屋で鑑定させたら名品だと知れた。秘密裡に質屋へ持参して銀子《ぎんす》に換《か》えて久しい。今頃｜質流《しちなが》れしていること...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title> - 風船葛</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2547/section/36525</link>
      <pubDate>Thu, 18 Sep 2025 18:00:00 +0900</pubDate>
      <description>　題名の「風船葛」から連想しました。
　盂蘭盆と精霊迎え、迎え提灯に見える植物と人魂の話です。
　
　2025.09.08　改稿：作品の後半部に修正を加えました。


　⋆作品はフィクションです。
　⋆実在の事物とは全く関係ありません。
　⋆情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[
　盂蘭盆には、二三泊祖父の家に集う習いであった。親戚一同、田舎の屋敷に集い、薄暮の頃には裏山の墓地に列をなして詣でた。晩に肝試しをしよう、と子供の中から声が上った。裏山は田甫の畷道《あぜみち》から一筋に、葛折《つづら》も綴らずに登る細い舗装路へ出る。道の先は墓地で、夜中でなければ危ないこともなかろうと話がついた。夕食後、三和土に揃って、懐中電燈を持たされて皆で大人の訓示を聞く。出立前には、蚊遣香の煙に焚き染められながら電燈を預かった。足首から這い上がる、燻煙は肌を擽って、煙々羅のように戯れたまま宙に解けた。最後の出発で、他の子供の背中も見えぬ夜の中に出た。畷道だけが、草を踏み固められて裏手の山へ消えている。　
　田甫の合間、青草を靴底で引き倒した道を進んでいく。薄暮には、そこに立看板があったものをとふと思った。蔓草の、風船葛の蔓が、看板の面《おもて》を蓋《おお》って藪草の裳に絡げていた。...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title> - 空蝉</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2453/section/35953</link>
      <pubDate>Mon, 18 Aug 2025 18:32:00 +0900</pubDate>
      <description>　題名の「空蝉」の字面から連想。
　つい先日、内田百閒の短編集を読みました。
　翡翠色の蝉と、脱殻になってしまった亡骸の話です。
　
　⋆作品はフィクションです。
　⋆実在の事物とは全く関係ありません。
　⋆情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。

　※表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[
　薄闇の中、蜩の声が雨垂れのように響いてきた。蚊帳の網目を透いて、軒端から明方の朝日が縁を浸してしらしらと流れる。文机の上に、薄緑の蝉が澄んだ色をして留まっている。本物ではない、翡翠で拵えた根付か帯留の類だろうと思う。数日前、露店市で見かけて、そのまま家に持ち帰ってきたのだった。琅玕《ろうかん》などという大層なものではない。貴石《いし》には疎い、翡翠は翡翠でも軟玉に違いない。有名な中国の玉の細工に似て巧緻な彫物で、今しがた蛹の割れ目から孵ったばかりの翡翠色の蝉に見える。眼から、華奢な脚から、また翅の葉脈を思わせる細い溝まで見事な出来だった。文鎮代わりに、卓上の紙切れの上に置いていたのだと思い出した。寝惚けていたのかもしれない。蜩の声を聴くうち、自分が蝉になる夢を見た。蛹を割る、背の方から殻が割れ、それで軟玉の透き通ったような翡翠の身が現れる。露わな緑の色に、自分でも清々しいような心地がし...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title> - 【遺稿】紫斑</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2319/section/34966</link>
      <pubDate>Fri, 04 Jul 2025 20:05:00 +0900</pubDate>
      <description>故・藤尾瑛臣氏の初期作品。
黎明期の作品のひとつであり佳編とされる短篇。
私は青痣を見て、小学生の頃の知己との間の出来事を思い出すが……。
＊ 本稿初出：同人誌『明媚』（1993年）


著者である架空の作家「藤尾瑛臣」が書いた掌編集の設定です。
自作の短篇『玉紫』にも加える予定です。同名のコレクションに納めたシリーズとなっています。
短篇小説『玉紫』【https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】

＊当作品は、実在のあらゆるものとは関係ありません。
＊作品はフィクションです。情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
＊表紙画像はかんたん表紙メーカーで作成して加工したものです。

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　　　　　　　　「紫斑《しはん》」　　　　　　藤尾瑛臣　　　　　　　　


　右の白脛《しらはぎ》に痣が浮いていた。紫玉《しぎょく》*の磨り潰された斑の残痕だった。
　私の幻視は、知己の細い脚を現世に呼び起こした。私は彼との間にある秘密を持っていた。遠い記憶に遡り、彼の白皙に浮かんだ内出血の黒ずんだ斑点を見た。熟れた野葡萄の果実を潰した青痣。所々、紫の痕が、柔い皮膚の肌理に滲み、果汁が染みついた打撲の痕が濁っていた。
　彼が隠していた「《《秘密》》」を知ったのは小学六年生の頃であった。
　彼との秘密は、その陰惨な青痣と密接な関係を有するもので他言を憚る。しかし、なお私の胸裡には、無邪気で残虐な稚戯の喜びが斑の痕を捺していた。素直に白状すれば、人倫や道徳に頓着するわけではなかった。記憶に封じた筈の、子供の頃の衝動が紫の血栓のように凝り続けていた。私は、彼に懐く衝動が、頭蓋から外界に漏洩するこ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>【一】 - 【遺稿】「藤邸」</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2228/section/34337</link>
      <pubDate>Tue, 29 Apr 2025 16:00:00 +0900</pubDate>
      <description>故・藤尾瑛臣氏の晩年作品。
最晩年の作品のひとつであり佳編とされる短篇。
藤の季節、「彼」からの手紙を頼りに向かった山奥で見たものは……。
＊ 本稿初出：『玉紫‐藤尾瑛臣綺譚集』（2016年）


著者である架空の作家「藤尾瑛臣」が書いた掌編集の設定です。
自作の短篇『玉紫』にも加える予定です。同名のコレクションに納めたシリーズとなっています。
短篇小説『玉紫』【https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】

【参考文献】
・起雲閣　公式パンフレット　（第27版　2024年6月）

＊当作品は、実在のあらゆるものとは関係ありません。
＊作中の建物は、熱海市指定有形文化財「起雲閣」をモデルとしています。
＊作品はフィクションです。情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
（建物については、あくまでモデルであって忠実な再現ではありません）

※表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[【一】
　車窓を見れば、五月の翠黛に淡い紫の群雲が垂れ込めた。竹藪の線路に迫る、隧道《トンネル》のような合間を抜けると川を挟んで山景が現れる。若緑、新緑の覆う山麓に、碧巌を割る滝のごとく藤花が秀枝から幾筋も湧いた。思えば、道中にも野生の藤が、鉄道の線路沿いの喬木へ絡まって薄紫の花房を垂れていた。或いは、柵や塀の上からしどけなく撓垂《しなだ》れた。時折、花房を尾のように叩きつける。目路の端に、過ぎ去った藤花が紫の雨となって繁吹《しぶき》を鞭《う》った。
　山紫の景色は、万緑を御する野生の藤によって紫に見えた。
　万緑叢中、山紫水明、若き葉叢を虐げる藤花ばかりが川面に映じて栄える。
　行李鞄には、彼から届いた一通の書簡が忍ばせてあった。柳行李ひとつで結構、とは旅の身軽を指す洒落のつもりであったろうか。言葉通り、押入から祖父の形見を出し、飴色の行李鞄を日蔭に干して提げてきた。鞄の底へ紫紺の縮緬の...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>【注意事項】 - 【遺稿】「藤邸」</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2228/section/34342</link>
      <pubDate>Tue, 29 Apr 2025 16:00:00 +0900</pubDate>
      <description>故・藤尾瑛臣氏の晩年作品。
最晩年の作品のひとつであり佳編とされる短篇。
藤の季節、「彼」からの手紙を頼りに向かった山奥で見たものは……。
＊ 本稿初出：『玉紫‐藤尾瑛臣綺譚集』（2016年）


著者である架空の作家「藤尾瑛臣」が書いた掌編集の設定です。
自作の短篇『玉紫』にも加える予定です。同名のコレクションに納めたシリーズとなっています。
短篇小説『玉紫』【https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】

【参考文献】
・起雲閣　公式パンフレット　（第27版　2024年6月）

＊当作品は、実在のあらゆるものとは関係ありません。
＊作中の建物は、熱海市指定有形文化財「起雲閣」をモデルとしています。
＊作品はフィクションです。情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
（建物については、あくまでモデルであって忠実な再現ではありません）

※表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[【注意事項】
＊ 本稿の初出は、同人誌『玉紫‐藤尾瑛臣綺譚集』（二〇一六年）です。
＊ この作品はフィクションです。実在するすべての事物とは関係ありません。自殺に関する記述がありますが、肯定や助長の意図はありません。作中の内容は、情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。また、法令等に違反する行為を推奨する意図はないことを明言いたします。]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>【五】 - 【遺稿】「藤邸」</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2228/section/34341</link>
      <pubDate>Tue, 29 Apr 2025 16:00:00 +0900</pubDate>
      <description>故・藤尾瑛臣氏の晩年作品。
最晩年の作品のひとつであり佳編とされる短篇。
藤の季節、「彼」からの手紙を頼りに向かった山奥で見たものは……。
＊ 本稿初出：『玉紫‐藤尾瑛臣綺譚集』（2016年）


著者である架空の作家「藤尾瑛臣」が書いた掌編集の設定です。
自作の短篇『玉紫』にも加える予定です。同名のコレクションに納めたシリーズとなっています。
短篇小説『玉紫』【https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】

【参考文献】
・起雲閣　公式パンフレット　（第27版　2024年6月）

＊当作品は、実在のあらゆるものとは関係ありません。
＊作中の建物は、熱海市指定有形文化財「起雲閣」をモデルとしています。
＊作品はフィクションです。情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
（建物については、あくまでモデルであって忠実な再現ではありません）

※表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[【五】
　そこへ一筋、白いものが尾を引いて────真直《まっす》ぐ薄闇を劈いて過ぎる。
　目前に、はたりと落花のように白足袋が脱げた。露白になった、足指が枯枝に干上がって見えた。彼の痩躯は、今や老いた藤蔓の化身と落魄《おちぶ》れていた。贅肉も痩け、浴衣が弛《たる》んで腰帯に括れたまま褄を垂らした。人影を見仰げば、天井へと視線が行き当たる。竿縁天井を、縦横無尽に藤蔓が伝って藤棚に似た。竿縁に絡む、藤蔓を絞首の縄に編んで首を吊っているのである。
　手も、また足首も、襦袢から伸びた両脛も藤蔓の束と見間違う。
　薄暗い室内は、洋燈もなく、暗澹たる木陰の泥濘に沈んでしんと静まる。
　愕然と、十畳間を見回せば茅屋と見紛うほどに荒れていた。荒んだ畳から、黴臭い塵埃の煙が立ち昇る。埃を被った、裏葉色に褪せた古畳の感触が掌に触れた。壁も、紫紺でなく、柳茶を薄めた色合いである。書院窓の、無惨に破れた障子には折...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>【四】 - 【遺稿】「藤邸」</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2228/section/34340</link>
      <pubDate>Tue, 29 Apr 2025 16:00:00 +0900</pubDate>
      <description>故・藤尾瑛臣氏の晩年作品。
最晩年の作品のひとつであり佳編とされる短篇。
藤の季節、「彼」からの手紙を頼りに向かった山奥で見たものは……。
＊ 本稿初出：『玉紫‐藤尾瑛臣綺譚集』（2016年）


著者である架空の作家「藤尾瑛臣」が書いた掌編集の設定です。
自作の短篇『玉紫』にも加える予定です。同名のコレクションに納めたシリーズとなっています。
短篇小説『玉紫』【https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】

【参考文献】
・起雲閣　公式パンフレット　（第27版　2024年6月）

＊当作品は、実在のあらゆるものとは関係ありません。
＊作中の建物は、熱海市指定有形文化財「起雲閣」をモデルとしています。
＊作品はフィクションです。情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
（建物については、あくまでモデルであって忠実な再現ではありません）

※表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[【四】
　十畳間の室は、三方の壁のすべてがけざやかな濃紫である。書院造の、左手に床の間、松を彫り込む欄間を除けば紫の壁面だった。凄艶な紫紺が、今や見慣れた藤の花房の薄紫よりも目に迫る。書院窓と、仕切りの襖ばかりが薄明るい。地袋の黄金《こがね》に、襖の絵柄も金霞を掛け渡して棚引いた。床の間の、松の床柱に沿って天井を仰ぐ。竿縁天井の中心、三房の藤花を模した色硝子の洋燈が花房を下げる。棒立ちのまま、鞄の把手《もちて》を握って喉に凝る固唾を嚥《の》み込んだ。
　彼の誘う足許へ、精気を啜った紫紺の畳縁が薄葉色の畳の合間を這う。
　と、彼を見遣れば、頭を傾げて室内を見回しながら訊ねた。曰く付きとは、何も藤の花のことではない。この部屋に覚えはないか、との質問に窮して押し黙る。彼が、些かの落胆に肩を落としたと見えて溜息を漏らす。趣味を知悉すれども、部屋に見覚えがあるとは言い難い。頭上の洋燈は、彼好みのガレ...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>【三】 - 【遺稿】「藤邸」</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2228/section/34339</link>
      <pubDate>Tue, 29 Apr 2025 16:00:00 +0900</pubDate>
      <description>故・藤尾瑛臣氏の晩年作品。
最晩年の作品のひとつであり佳編とされる短篇。
藤の季節、「彼」からの手紙を頼りに向かった山奥で見たものは……。
＊ 本稿初出：『玉紫‐藤尾瑛臣綺譚集』（2016年）


著者である架空の作家「藤尾瑛臣」が書いた掌編集の設定です。
自作の短篇『玉紫』にも加える予定です。同名のコレクションに納めたシリーズとなっています。
短篇小説『玉紫』【https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】

【参考文献】
・起雲閣　公式パンフレット　（第27版　2024年6月）

＊当作品は、実在のあらゆるものとは関係ありません。
＊作中の建物は、熱海市指定有形文化財「起雲閣」をモデルとしています。
＊作品はフィクションです。情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
（建物については、あくまでモデルであって忠実な再現ではありません）

※表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[【三】
　彼は、思いの外に、健勝そうな顔色をして出迎えた。
　手紙通りの旅程だった、と彼に応えながら玄関の框で靴を脱ぐ。新品の帆布地の白靴を俯瞰して、夏の季語を先取りであると漏らす声は明るい。蓬髪でもない黒髪とは対照に日焼けを知らぬ白皙である。風采も、当時翻訳家を目指した文士の面影を残していた。頬は、流石に贅肉も落ちたか、頬骨が断崖のように切り立って落ち窪んでいた。微笑を覗かせれば、笑窪に似た皺が寄って皓歯が光る。藤紫の、褪せた浴衣に黒の袢纏を重ねて袖手《しょうしゅ》*に構える。肌寒いのか、彼の病身を憂慮して、目敏く浴衣の下に透けたままの長襦袢を見た。薄萌黄の襦袢の、懐を掻き合わせながら、彼は框の上《あが》り端《はな》に置いた上履きのスリッパを目顔で指して勧めた。
「よく来てくれたね。ずっと君を待っていたんだよ」
「手紙を有難う。二十年ぶりか、年賀状ばかりで無沙汰をした」
　下駄箱の上、簪...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>【二】 - 【遺稿】「藤邸」</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2228/section/34338</link>
      <pubDate>Tue, 29 Apr 2025 16:00:00 +0900</pubDate>
      <description>故・藤尾瑛臣氏の晩年作品。
最晩年の作品のひとつであり佳編とされる短篇。
藤の季節、「彼」からの手紙を頼りに向かった山奥で見たものは……。
＊ 本稿初出：『玉紫‐藤尾瑛臣綺譚集』（2016年）


著者である架空の作家「藤尾瑛臣」が書いた掌編集の設定です。
自作の短篇『玉紫』にも加える予定です。同名のコレクションに納めたシリーズとなっています。
短篇小説『玉紫』【https://kakuyomu.jp/works/16818093089068929492】

【参考文献】
・起雲閣　公式パンフレット　（第27版　2024年6月）

＊当作品は、実在のあらゆるものとは関係ありません。
＊作中の建物は、熱海市指定有形文化財「起雲閣」をモデルとしています。
＊作品はフィクションです。情報の正確性や信憑性を保証するものではありません。
（建物については、あくまでモデルであって忠実な再現ではありません）

※表紙画像は「かんたん表紙メーカー」で作成・加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[【二】
　数寄屋門に、白漆喰の塀を囲った邸宅もつきづきしい。彼の云う、曰く付きの理由もまたすぐに知れた。漆喰塀の、棟瓦を越して、甍の軒端に薄紫の藤花を繞《めぐ》らした二階屋が覗く。短い花房が、御簾のごとく藤花の滝を連ねて揺らげた。樋か何かに、蔓を這わせて野生の藤を手懐けたものと見える。花房は、幾筋かに岐《わか》れ、笠の花群《はなむら》の尾を重ねて段々の滝が屋根に零れるようだった。そして、その二階の甍も、黒甍とは異なる妙な色合いに照っていた。
　濃紫、青紫の、霜が降りた巨峰の果皮のあの怪しげな光沢である。
　釉薬瓦か、不思議な妖艶さを湛えた紫の甍を仰いだ。二階屋は、大正か昭和初期の建築であろう、伝統的な日本建築のところどころに和洋折衷が窺える。右手の潜門に寄り、通用口で呼鈴を鳴らしたが返事はない。仕方なく、正面の格子戸を引いてみれば滑らかに動いた。山奥の日向に晒されて甃石も母屋へと続く。路端...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>【寄稿】思い出のおやつ - 悪魔と陰膳</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2173/section/33942</link>
      <pubDate>Wed, 02 Apr 2025 18:00:00 +0900</pubDate>
      <description>　
　喫茶店と珈琲とチョコレートと、あるいは悪魔の話。
　悪魔とありますが、怪談および幽霊譚といったほうが正しいかもしれません。
　（実質番外編です。本編は【試読版】『玉紫』にあたります）
　
　　陰膳については、死者に供える食事の拡大解釈で用いています。

　【参考サイト】（最終アクセス　2025.03.31）
　　イノダコーヒ　https://www.inoda-coffee.co.jp/

　＊作品はフィクションです。実在の社名やブランドとは関係ありません。
　＊作中のブランドや商品名について利益を得ることを目的としていません。
　＊上記のサイトを情報確認のために参考にしています。
　＊表紙画像は「かんたん表紙メーカー２」で作成後に加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[
「生前の先輩はイノダコーヒのラムロックが好きだった。
　元からチョコレートが好物で、駄菓子のチョコをよく齧っていたものだ。
　記憶にあるのは、彼に時折連れていかれた本店の内装とラムロック。酒も煙草も、チンピラみたいな風采のくせに好まなかった。珈琲も苦手だったのではないかと思う。喫茶店では珈琲を頼んでいたから定かではない。当時の私は、まだ十八歳で、洋酒の香りのする洋菓子に憧れを抱いていた。それは、あの黒く艶やかなチョコレートで鎧われた、金紙に鎮座する歪なかたちの菓子でなくてはいけなかった。私は多分、彼に饗されたラムロックに惹かれていたのだろう。親交が途絶えた後、彼がどんな菓子を好んでいたのかを知らない。オペラやザッハトルテと一掬の洋酒が似合う男だったのかもしれない。けれど、私が思い出すのは、珈琲とともに先輩が齧るラムロックだ。時折、彼を偲んでは、陰膳としてラムロックの相伴にあずかっている。...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>『ラムロックの悪魔』 - 悪魔と陰膳</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2173/section/33941</link>
      <pubDate>Wed, 02 Apr 2025 18:00:00 +0900</pubDate>
      <description>　
　喫茶店と珈琲とチョコレートと、あるいは悪魔の話。
　悪魔とありますが、怪談および幽霊譚といったほうが正しいかもしれません。
　（実質番外編です。本編は【試読版】『玉紫』にあたります）
　
　　陰膳については、死者に供える食事の拡大解釈で用いています。

　【参考サイト】（最終アクセス　2025.03.31）
　　イノダコーヒ　https://www.inoda-coffee.co.jp/

　＊作品はフィクションです。実在の社名やブランドとは関係ありません。
　＊作中のブランドや商品名について利益を得ることを目的としていません。
　＊上記のサイトを情報確認のために参考にしています。
　＊表紙画像は「かんたん表紙メーカー２」で作成後に加工したものです

　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　　　　　　『ラムロックの悪魔』　　　　芳賀喬治


　悪魔には、無糖の珈琲とラムロック*が似合うらしい。十二月の午後、京都駅の地下街にある喫茶店で悪魔を見た。その日、僕は幻想作家の絵崎先生と待ち合わせをしていた。絵崎先生は当時の僕にとって憧憬の対象だった。僕は新人作家、それも駆け出しの怪談作家だったけれど絵崎作品の愛読者で、怪談と怪奇幻想は似て非なるものでありながら、絵崎先生は僕の処女作を買ってくれたらしかった。絵崎先生の敬虔な崇拝者になったのは言うまでもない。一年前、対談の機会を得てからささやかな親交を持っていた。京都へ取材旅行に、とメールで書き送れば面会の誘いが降りたのだ。後日、先生が指定したのは、京都駅地下街にある老舗の喫茶店だった。

　午後二時半、僕は迷いながらもイノダコーヒ*に辿り着いた。　
　新幹線は待ち合わせよりも少し早めの到着だった。けれど、僕は件の喫茶店を間違え、地下...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>うそつき【鷽憑】 - 怪鳥三題</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2129/section/33726</link>
      <pubDate>Fri, 07 Mar 2025 18:00:00 +0900</pubDate>
      <description>題名通り、「怪鳥」にまつわる三題の掌篇集。
　短編を書く前の、原案としてのスケッチ的な素描を兼ねています。
　正統派の怪談小説を目指しました。美少年、美青年の現れる怪談が好きです。
　
　　【目次】
　　　・「鵜嚥【うのみ】」　……鵜／駄洒落／魔を覗く仕種
　　　・「烏鷺【うろ】」　　……烏鷺／真偽不明／弾指
　　　・「鷽憑【うそつき】」……鷽／駄洒落／罰当たり

　【参考文献】
　『しぐさの民俗学』　常光徹著、ミネルヴァ書房　2006年
　『ホトトギス季寄せ』　稲畑汀子編、三省堂、1987年

　⋆作品はフィクションです。実在の習俗などとは関係ありません。
　⋆上記の文献を参考にしていますが脚色や潤色を含みます。（弾指・鷽替えについて）
　⋆情報の正確性や信憑性を保証しません。
　（表紙はかんたん表紙メーカーで作成・加工したものです）
　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　奇妙な話だが、鷽に憑かれた男を知っている。
　夏の晩、その男が漏らした話も譫言か嘘噺の類であろう。
　酷暑の只中、男とは川床じみた桟敷で卓を囲んだ。混雑の所為で、相席を打診されたのを肯ったのである。男は結構な色男、口達者な瓜実顔の好男子だった。暑気を払わんと、開いた扇子が手品師のような手捌きで。嘘しか吐けぬ、と薄笑いを浮かべての前口上。子供の頃、鷽人形を壊した所為でと語り種を披露する。鷽人形とは、正月に天満宮で行われる鷽替のあれか。説教を懼れ、証拠の隠滅を謀るのが罰当たりな子供の稚拙。鷽は、駄洒落の由来で、災禍を嘘とする縁起物である。以来、虚言癖を患い、大法螺吹きとなったと語る。その口吻も、上方の剽軽な女慣れした嫖客の風情である。扇子片手に、葛湯のような夜風を煽げば小鬢が靡く。素知らぬ男は、麦酒を手酌でグラスに注いで乾杯の仕種。納涼床の時分、夏場の怪談会に講談師もかくやの流暢な弁舌だった...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>うろ【烏鷺】 - 怪鳥三題</title>
      <link>https://antiantarctica.kashi-hondana.com/author/page/2129/section/33725</link>
      <pubDate>Fri, 07 Mar 2025 18:00:00 +0900</pubDate>
      <description>題名通り、「怪鳥」にまつわる三題の掌篇集。
　短編を書く前の、原案としてのスケッチ的な素描を兼ねています。
　正統派の怪談小説を目指しました。美少年、美青年の現れる怪談が好きです。
　
　　【目次】
　　　・「鵜嚥【うのみ】」　……鵜／駄洒落／魔を覗く仕種
　　　・「烏鷺【うろ】」　　……烏鷺／真偽不明／弾指
　　　・「鷽憑【うそつき】」……鷽／駄洒落／罰当たり

　【参考文献】
　『しぐさの民俗学』　常光徹著、ミネルヴァ書房　2006年
　『ホトトギス季寄せ』　稲畑汀子編、三省堂、1987年

　⋆作品はフィクションです。実在の習俗などとは関係ありません。
　⋆上記の文献を参考にしていますが脚色や潤色を含みます。（弾指・鷽替えについて）
　⋆情報の正確性や信憑性を保証しません。
　（表紙はかんたん表紙メーカーで作成・加工したものです）
　©　蘆蕭雪　Ro Shosetsu</description>
      <content:encoded><![CDATA[　檀那寺へ続く、緩やかな坂道を降りていく漫歩の折のことである。
　鬱葱たる竹藪が、薄様の月を浮かべた夜空を鋸歯で齧る。月はまだ、薄紙の照るごとく幽かに明るい。檀那寺の隣には、孟宗竹と熊笹の混じった竹藪が屯する。竹藪は黒く、陰気な曇り空の鼠色に濃墨で木立を描いた。坂の中腹に、檀那寺はあって、漫歩に通り掛かると坊主頭の少年がいる。竹箒を片手に、土瀝青の舗道に落ちた笹葉を掃いている。寺の次男坊、青い剃り跡も瑞々しい坊主頭で、清冽な眼差しを湛えた物珍しい美少年である。挨拶がてら、立ち話をしていると少年が面を上げた。切れ長の目は藪の方をサッと流し目に見る。矢継早に、右手の示指を差し向ける、すると碁石を盤に打ったが如く音が鳴る。番えた指は丁度指鉄砲の仕種で、示指を弾き出して空を撃った。空砲のようである、かと思えば何か鳥のような影が尾を引いて墜ちる。遠目にも燕雀とは思われぬ、しかし鴻鵠と言うには黒かろう...]]></content:encoded>
    </item>
  </channel>
</rss>
